今回は、少し難しい問題をテーマにします。
皆さんは普段「卍(まんじ)」の文字をよく使いますか?
最近は特に若者の間で流行っていて、「東京卍リベンジャーズ」のタイトルに使われている文字としても有名で、言葉の語尾に使われたりSNSでも多く見かけると思います。
「卍(まんじ)」は寺院の地図記号として用いられており、お寺などで印としてよく見かけることがあると思います。
ところで、「卍」をあまり使ってはいけないと言われることがあります。
何故かと言うと、ナチス・ドイツの国旗のマークに酷使していて、日常的に使うのは好ましくないとのこと。
日本人が使っている「卍」は、ドイツの悲しい歴史と同じ意味合いがあるのでしょうか?
本当に、「卍」を使ってはいけないのでしょうか?
今回は歴史認識とともに、「卍」の文字について詳しく調べてみました。
ナチス・ドイツについて
できるだけ、簡単に説明したいと思います。
ヒトラーによる独裁政治
ヒトラーが首相に任命されてわずか1年ほどで、ナチ党が掲げる「指導者原理」に基づく党と、指導者による独裁指導体制を築いたのです。
つまりこれは例えばの話しですが、今の日本は自民党が政権を担っていて、岸田総理大臣が日本のトップとして存在していますね。
この自民党が、「自分たちが決めたことが絶対」であり、国民に有無を言わさず無条件に服従させ忠誠を求めるという考え方の政党になってしまい、そのトップである総理大臣が政治権力を独占して握り、まさに独裁者となってしまうという事です。
ユダヤ人とは
ユダヤ人とは、ユダヤ教という宗教団体の信者であり、基本的にユダヤ教の信者を親に持つ者(血統)によって構成されています。
イスラム教の信者を「ムスリム」キリスト教の信者を「クリスチャン」と呼ぶのと同じで、「ユダヤ人」という人種だったり血統的民族というものではありません。
またユダヤ人はナチス・ドイツが始まるずっと以前から、差別を受けることが多かったのです。
もともと、キリスト教はユダヤ教に起源を持ちます。
途中で分裂をしたのですが、クリスチャン達はイエス・キリストを救世主として認めなかったユダヤ人を蔑(さげす)み、憎むようになっていったのです。
またイエス・キリストが磔(はりつけ)にされたのも、ユダヤ人のせいだとしているのです。
その後キリスト教がどんどん広がっていき、ユダヤ人はますます肩身が狭くなっていったのです。
ユダヤ人の大量虐殺について
ナチスドイツの時代、ヒトラーが独裁政権を行い、ユダヤ人を排除する政策を次々と打っていきました。
いったい何故、ユダヤ人だけにそんなひどいことをしたでしょうか?
その狙いは明確な敵を作ることによってドイツ国民をひとつにすること、でした。
ちょっと理解ができませんね・・・。
ユダヤ人迫害が行われる中、第二次世界大戦が始まりドイツは隣国のポーランドを侵攻しました。
ところがポーランドには200万人以上ものユダヤ人が暮らしており、彼らをすべて追放するのは難しいと判断したナチスはそこで方向性を変えることに。
なんとユダヤ人を無理やり「絶滅収容所」に入れて、処理することを決行し始めたのです。
「絶滅収容所」で行われることは、主にガスによる大量虐殺(ホロコースト)です。
他にも銃殺刑・絞首刑など第二次世界大戦中に、罪のない約600万人のユダヤ人が虐殺されたのです。
卍とハーケンクロイツの違い
日本で使われている「卍」と、ナチス・ドイツの国旗は同じなのでしょうか。
それぞれの文字(マーク)の意味を、説明したいと思います。
日本の卍(左まんじ)
まずは、今回のテーマである日本で使われる「卍」の意味を調べてみました。
卍(まんじ)は、ヒンズー教や仏教で用いられる吉祥の印であるとともに、日本では仏教を象徴する記号としてよく知られ、漢字であり家紋でもある。(出典: フリー百科事典Wikipedia)
このマークは「ハーケンクロイツ(Hakenkreu)」と呼ばれています。
古代よりアジアや西洋で用いられてきた図形「鉤(かぎ)十字」のドイツ語名。特にナチス・ドイツにより用いられた鉤十字のこと。鉤十字は日本では卍(まんじ)と呼ばれており、鉤型の先端が左を向いている「左まんじ」だが、ヒトラーによりドイツで結党された国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)で、逆向きの「右まんじ」が党章として採用された。1935~45年にはドイツ国旗にも用いられており、ナチス・ドイツの紋章として世界的に知られている。
(出典:コトバンク)
ユダヤ人への「命のビザ」
ヒトラーの独裁政治による大量虐殺から逃れるため、国外に逃亡を図るユダヤ人が大勢いました。
そしてリトアニアという国に向かい、彼らが向かった先が日本領事館だったのです。
日本人は、ユダヤ人に対して全く偏見を持たずに接しました。
むしろ日露戦争のときにユダヤ人のある資産家が戦時国債を購入してくれたことを、とても感謝していたくらいでした。
そもそも日本人は当時アメリカから差別を受ける側でもあったため、ユダヤ人に対しては親近感のある存在でもあったのです。
ユダヤ人の気持ちが、理解できたのですね・・・。
そして命からがら逃れてきたユダヤ人たちは、日本領事館にビザの発給を求めました。
ビザを発給するためには、いろいろな規則があります。
難民であるユダヤ人たちは、当然ビザ発給の資格がない者がほとんどでした。
また第二次世界大戦中のこの時代、日本とドイツは同盟国でした。
そうなると日本の立場上、ユダヤ人の味方をして、あからさまにドイツの政策に反対するような事を行うのは、現実的に難しいものがあったです。
悲しい現実ですね。
しかし!
難しい状況の中で苦悩しつつも大きな決断をし、資格を持たないユダヤ人たちのビザ発給を行っていったのが、当時のリトアニア領事代理の杉原千畝(すぎはらちうね)という人物でした。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ユダヤ人を救おうとした杉原さんの勇気と優れた人間力は、現在に至るまで高い評価を受けています。
杉原さんが発給したまさに【命のビザ】によって救われたユダヤ人は少なくとも6,000人はいたと言われています。
こんな厳しい時代に遠いヨーロッパで、たくさんの命を救っていた日本人がいたなんて、なんだか感慨深いものがありますね。
歴史認識について
ではここで話しは戻ります。
やはり「卍(まんじ)」は、日本で使ってはいけないのでしょうか?
日本には誇り高い伝統と長い歴史があり、私たちの遠いご先祖様たちは 卍を象徴する仏教の教えを信仰してきました。
そして「卍」はナチス・ドイツが国旗として採用する以前から、中国や日本で使われていました。
「だから日本人は全く気にせずに使うべき」という意見が、世界的に多いようではあります。
ただそこには歴史認識をしっかり持った上で、というのは当然重要になってくると思います。
正直「ナチスドイツ・ユダヤ人迫害」について、あまりにも残酷でとても悲しい出来事なので思わず目を背けたくなりますし、なかなか正面から向き合えるような勇気はありません。
ただそこは、日本の「卍」がハーケンクロイツとは全く別物なんだという認識をしっかり持つためにも、絶対に目を背けてはいけないと思います。
ドイツ人が寺院の卍マークを見て固まる、というのは私も見たことある現象です。似てるけど逆向きだから別モノでは? とか咄嗟に考えそうなものですけど、存外そうならない事実には色々考えさせられます。人間一般の心理とか、ドイツ心理の特殊性とか。https://t.co/k7TIM9uOvJ
— マライ・メントライン@職業はドイツ人 (@marei_de_pon) 2017年7月8日
日本の寺マークを見てビックリする欧米人は多いが、「卍(まんじ)は、日本では古来から使われてる意匠で、100年以上前の建築にも使われています。ナチズムとは関係がありません」「なーんだ、そっかーハハハ驚いたなぁ」でまだ済んでる今のラインを守らねばならんのだ。
— こなたま(CV:渡辺久美子) (@MyoyoShinnyo) 2017年7月9日
さいごに
1945年4月30日、ヒトラーはナチス・ドイツが戦争に負けることがわかり、妻と共に自死しました。
それならばあの大量虐殺は、いったい何だったのだろう・・。
本当に、悲しい歴史ですね。
二度と繰り返してはいけないと思います。
誰もが、ナチス・ドイツ時代の悲しい悲劇を擁護する気持ちはありません。
しかしながらどうしても、象徴とするマーク・文字が酷似していると言われかねないのも現実です。
そしてやはり、「卍」と「卐」は別物なのです。
歴史認識をしっかり持った上で「卍」と「卐」は違うんだよと、しっかり言える日本人でありたいと思います。
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